今日、令和3年7月23日、一年越しの東京オリンピックの開会式が開かれます。
心身を極めて競技に望むアスリート達のパフォーマンスは、いつも私たちに感動を湧かせてくれます。
今回はコロナ禍を演じながらのため、無観客となり、アスリートも観客も少し盛り上がりに欠けてしまいますが、テレビや動画越しに優れたパフォーマンスに応援はして行きたいと思っています。(先日、大谷翔平選手が二刀流で湧かせた大リーグオールスター戦やノバク・ジョコビッチ選手が3大会連続6度目の優勝を果たしたウィンブルドンでの会場では、NOマスクかつ満席で楽しんでいて、盛り上がりが伝わりましたね。)
先日、NHKでタモリと山中伸弥氏の「超人たちの肉体」という番組で、鍛え抜かれたアスリート達の競技特性に応じた体の適応・発達の様子を伝えていました。
一人目の水泳競技界の超人ケレブ・ドレセル選手は、それまでの記録保持者マイケル・フェルブスの記録49秒82(2010年)を10年ぶりに破り49秒50(2020年)という記録を打ち出しました。それまでのフェルブスの記録は水の抵抗を少なくする競技用の高速水着の着用によって打ち出された記録だったため、その水着が廃止された2010年以降はもう更新は難しいとされていたのでした。今回その記録を更新した泳ぎの秘密を伝えていました。
それは、疲れの出るレース最終盤の15メートルを無呼吸で泳ぎ切るという前代未聞の泳法に成功したためでした。さらに、胸鎖乳突筋(頭蓋骨から鎖骨をつなぐ筋肉)は驚異的に発達していました。これにより、息継ぎの瞬間に効率良く空気を取り込むことができ、最後のラストスパートでスピードを落とすことなくゴールインし、記録更新になったのでした。
もう一人ご紹介しますと、マラソンの世界記録保持者、ケニアのエリウド・キプチョゲ選手です。“人間には限界はない”ことを証明し、世界記録2時間1分39秒と2時間を切るところまで迫っています。(非公式では1時間59分40秒)
ちなみに、マラソンの記録の限界は1時間57分58秒とされています。人間の心肺能力の最大値から導き出されたものです。
今回は、筋肉だけでなく、臓器の働きを科学の力で知り、その力で限界を突破しようと挑戦している取り組みを紹介していました。その臓器とは「腸」です。
マラソンでは「30キロの壁」と言われていることがあり、筋肉に蓄えられているエネルギー源、糖質が不足するタイミングです。終盤30kmを超えるとペースがガクンと落ちてしまうのですが、キプチョゲ選手だけはペースが上がっています。
その30キロの壁を突破するキプチョゲの速さの秘密が“腸”にあるということです。
それまで科学者は、トップランナーの強さの秘密は心肺機能の高さやエネルギー効率の良いフォームにあると考えてきました。ところが、最新の科学で、ケニア人の強さの全く別の可能性が分かってきました。それは「腸トレーニング」です。つまり、食生活に秘密があるのです。その中には、ケニアの伝統食“ウガリ”があり、トウモロコシの粉を練って蒸したもので、糖質が豊富です。
世界のトップランナーのカロリー摂取においては糖質の割合がおよそ50%なのですが、ケニアの選手達は糖質が8割近くを占めていました。
高糖質が腸に作用することで、強さを生み出していたのです。高糖質で腸をトレーニングすることで、腸に変化が起こり、糖質を吸収する能力が上がってくるのです。すると、レース中に補給するドリンクから糖質を効率良く吸収でき、そのおかげで最後までスピードを維持することができるということです。
昔の日本人はほとんどヴィーガンで、糖質過多でした。そのため、小柄な日本人でありながら、重い荷物を長時間担ぎ続けていて、当時の外人が驚くほどでした。現在、トップアスリートやオリンピアンの中にもヴィーガンが多くいます。ケガをしにくくなり、また持久力が維持できるからです。
とにかく限界まで無駄をそぎ落として競技に臨むアスリートの祭典をいろんな角度から楽しんでみましょう。