心の乱れは文字に現れます。そして、きちんと文字を書くと心が安定してきます。文字を整えれば、心も健康になるのです。
手書きの文字は、スマホやパソコンの文字と違い、書いた文字を確認する行為が伴うため、脳の複数の領域(前頭葉や頭頂葉など)を同時に活性化します。
書道家で文字ドクターの石﨑白龍さんは、認知症予防に取り組む脳神経外科医の濵﨑清利先生の監修の下に「認知症文字トレーニング」というメソッドをまとめました。
それを、簡単にご紹介します。
この認知症文字トレーニング(以下文字トレ)では、病院に行かなくても自分で、自宅で文字を書くだけで認知症の兆候を発見できます。お手本に忠実に、何回か書いてみて、どうしても手本通りに書けなければ、自分をコントロールできていない、認知機能が落ちていることを本人が自覚、発見できます。そうすることで、病院に足が向きやすくなり、早期発見できる可能性が高まるのです。
濵﨑先生は、特に初期の認知症であれば、文字トレがとても有効だとおっしゃっています。認知症は、脳の特定の部位の血流が悪くなることで陥ります。お手本を見ながら自分が正しく書けているかを見る、そういう判断・判別が発生することで脳に刺激が行くというのです。
簡単な発見法として、その一部として、「口」を見ます。その終筆にすき間、空きができている(最後の下部の横棒の右端と右の縦線の下部との間がくっついていない)人は、最近物忘れが多くなっているかもしれません。これは、筆跡心理学・筆跡診断では「接筆開型」といい、お金が出ていく、使い方が無計画である、浪費してしまい貯まらない性格を示していると見られます。簡単にオレオレ詐欺に引っかかってしまいますね。
それ以外にも、「目」などの文字では横線を等間隔に書く、「様」では右の縦線にきちんとハネがあることなどがポイントになります。
横線が等間隔になっていなければ、物の置忘れ、物事が頭から抜けがちになり、ハネは物事への責任感の強さ、また物事に優先順位をつける力と関連していて、これらの乱れは見当識障害の兆候かもしれません。
そして、きちんと文字を書く練習によって、物忘れ、記憶障害の予防・改善にもなるのです。
とにかく、きちんとお手本に従って楷書で書いていきます。そして、どんな漢字を書くときでも大切なポイントは次の3つです。
- 「一、ニ、三」とリズムよく、かつ気持ちを込めて書く
- 起筆と終筆は素直に
- とめ、はね、はらい
これらに気を付けて、一つの文字につき大体3カ月、長くて半年くらいは継続する必要があります。1日15分を目安に、深呼吸して息を調え、集中できる静かな環境で行ってみましょう。(参考テキスト:「さよなら認知症文字トレ」徳間書店)
まだまだ認知症とは無関係というあなたも、これからは書く文字にも心を込めていきましょうね。
(参)月刊致知2021.11、筆跡診断