2019年に、世界では年間1100万人の多くの人が“不健康な食事”が原因で、寿命より早く死亡しているという調査結果が、イギリスの著名な医学誌「ランセット」に発表されました。
1年間で死亡した全成人のうちの5人に1人に相当するという衝撃的な結果で、喫煙による死者より多いということです。
“不健康な食事”は、年齢や性別、地理的な影響、経済状態などにかかわらず、どんな人でも早死にの原因になるのです。
分析の結果、最も影響を及ぼしたのは、全粒穀物や野菜、果物の摂取が少ないことと塩分の摂取量が多いことでした。続いて、脂肪、特に飽和脂肪酸の多い牛肉や豚肉、加工肉のとりすぎ、糖質やトランス脂肪酸のとりすぎが影響していました。
この塩分、油分、糖分の「とりすぎ3兄弟」は、現在大部分が加工食品から摂取されています。今回、塩分のとりすぎに注目してみましょう。
塩分はとりすぎると血圧が上がり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。また、心臓や血管に直接影響を与え、心臓が機能不全に陥る原因にもなります。塩分の過剰摂取は最も大きな死因になっているのです。
現在、日本ではインスタントラーメンが日常食になっています。日本人1人が年間に食べるインスタントラーメンは45.4食(2019年)です。しかし、この数字は平均の数であって、一人暮らしであれば、ほぼ毎日ということも少なくないでしょう。手軽で、安価で、美味しいからです。
そして、このインスタントラーメンの中に相当量の塩分が隠れているのです。インスタントラーメン1食当たりの食塩相当量、つまり塩分は、約10グラム。7~8グラムは当たり前です。
実は、塩分過多の加工食品は“おいしい”のです。
インスタントラーメンのつゆを“おいしく”飲めるのは、添加物や種々のエキス類を駆使して塩味をあまり感じないようにして、うま味とコクが出るように調味されているからです。100mlの水に2グラムの塩を溶かしたら塩分は2%で、これが絶対塩度。これはしょっぱくて飲めません。一方、2%の塩分濃度の水に、グルタミン酸ナトリウムなどの複数のうま味調味料と、タンパク加水分解物や酵母エキス、チンキエキスなどの粉末を溶かすと、皆が“おいしい”という味に変わります。このとき舌に感じる塩分が1.2~1.5%とかなり低く感じます。これが舌感塩度です。この舌感塩度を麻痺させるカラクリにより、知らず知らず塩分をとりすぎてしまっているのです。
ちなみに、「和食は塩分をとりすぎる」と言う人がいますが、和食では絶対塩度と舌感塩度はほぼイコールで、一度に多くとれないようになっています。塩分9グラムをとるには、梅干し3個、みそ汁5杯分です。むしろ高濃度の塩分をとっていても気づかない即席めんのほうが、よほど健康上問題になるのです。
一人暮らしで、インスタントラーメンを常食しながら夜更かしして突然死はあるあるです。また、若い年代の不整脈も多い気がします。
加工食品は、他にさまざまな問題がありますが、塩分の点からも大きく健康上問題があるので、出来る限り避けて行きましょう。
そして、全粒穀物や野菜、果物は、逆に塩分を排出するカリウムや食物繊維を多く含み、心臓を守る働きがあり、心疾患のリスクを下げてくれます。
(参)家族と自分を守る「安心な食品」の選び方