がんが、ストレスとの関りが非常に深い病気だということは、さまざまな科学的研究で明らかにされています。
1974年から1978年の4年間、サイモントンがんセンターでは、サイモントン博士らによるカウンセリングを受けた患者の病気の進行と治癒の過程を調べる研究を行いました。
この研究では、合計193名の進行がんの患者が、通常の医学的な治療に加えてカウンセリングを受けました。
この研究での生存期間の平均値(左)と当時の医学文献の平均値(右)は、以下のとおりです。
サイモントン療法 当時の医学文献の平均値
乳がん 38.5カ月 18カ月
大腸がん 22.5カ月 9カ月
肺がん 14.5カ月 6カ月
この違いは、いずれも末期患者であったことを考えると驚異的です。
このようにカウンセリングが個々人のQOL(人生や生活の質)の向上に役立ちこそすれ、足を引っ張るものではないということが分かります。
サイモントン博士以外の研究で大規模なものとしては、ドイツのキュークラー博士らによる無作為比較試験(もっとも信憑性の高いと言われる試験形態)があります。
この研究は、1991年から1993年の2年間に実施されました。その後、2003年に追跡調査が行われ、トータルで10年間に渡って行われました。
その結果、カウンセリングにより心理的サポートを用いてストレスに効果的に対処できた治療群は、対象群(通常治療のみでカウンセリングを受けなかった群)に比べて生存率が高まるという結果を出し、ストレスの対処とがんの治癒の因果関係を明らかにしました。
キュークラー博士の研究でも、生存期間が約2倍、長期生存率が約4倍、そして、QOLが高まるという結果が出たのです。
これらの数字は抗がん剤と比べると、非常に効果があると言えるでしょう。
もし、これらの数字が抗がん剤に適用され、しかも副作用のない新薬として発表されたのであれば、おそらく世界中でトップニュースとして流され、各国のがんセンターで処方されるようになるでしょう。
がんの患者への心理的アプローチが生存期間を著しく伸ばすことも驚きですが、それ以上に大切なこととして、患者さんのQOLを保つ、または高めるということがあります。心理的サポート、または治療を行った患者さんは、そうでない患者さんに比べてQOLが高くなっていることが分かっています。
サイモントンがんセンターでは、心理的治療を行った患者さんの51%は、がんの診断前と同じレベルの生活行動をし、78%は発病前の7、8割の生活行動レベルを維持しているということが分かりました。
このように、患者さん自身が治療や人生を前向きに生き始めたとき、自分自身の命に影響を与えることになるのです。癒しの質は、その人の生きる姿勢で変わると言えるのです。
(参)サイモントン療法