歯の治療の世界はよく理解できませんが、栄養学等で一緒になる何人かの歯医者さんにお聞きすると、皆がインプラントは安易にするものではないことをおっしゃっていました。
そのインプラントの実際はどうなのでしょうか。
今回はそのような疑問を持つ中で出会った「いい歯医者悪い歯医者」という書籍の中に参考になる内容が載っていたので、ご紹介します。
・・・インプラントは歯槽骨にチタンやセラミックなどの人工歯根を打ち込んで、その上に義歯を固定するものです。一部の無責任なマスコミや評論家は、インプラントのことをあたかも夢のような治療法としてもてはやしてきたが、実は非常に危険な治療法です。
その危険性を説明する前に、自分の歯が生えてきたときのことを思い出して欲しい。よく覚えていないという方は、自分の子どもでも近所の子どもでもいい。歯肉を破って歯が生えてきたときに、血だらけになった覚えがあるだろうか。よほどのことがないかぎり、そんな人はいないはずだ。歯肉は少しずつ自然に破れ、出血はしないのです。
なぜ、そんなことが可能かというと、自分の体内から自分の歯が生えてきたからです。歯の生える時期が来ると、歯の周囲の細胞が自殺することによって、自然と歯茎に窓が開きます。そのために、たいして痛くもなければ、血も出ずに歯が顔を出します。この現象は「アポトーシス」、または「細胞の自殺」と呼ばれていますが、まさに人体の不思議です。これこそが自然の営みというものでしょう。
ところが、これと同じような穴を人工的に歯茎に開けたら、どうなるでしょう。大変な痛みを伴い、大量の血が流れ出てきます。さらに、そんなところに異物を入れたとしたら大変です。ほとんどの場合、拒絶反応が起きて、異物を体外に押し出そうという働きが起きます。ちょうど、指に棘を刺したときのように、周囲が炎症を起こし、皮膚を塞いで異物を体外に排出しようとします。
このようにインプラントは、まったくこのままのことを実行しています。ある生理学者は、インプラントを指して「骨に刺さった棘」と表現していますが、まさにそのとおりなのです。・・・
・・・インプラントの長所として、寿命が長いことが喧伝されていますが、決してそんな報告はありません。
そもそも、インプラントはがっちり骨に打ち込んであるので、まったく動かない歯です。本来ならば、歯には歯根膜があり、少し動くことによって噛み合う力を緩衝しているのですが、インプラントのような、言わば構造の違う歯があることによって、周囲の歯との協調が得られません。そのために、口の中のバランスが大きく乱れ、周囲の歯の寿命が縮められてしまうのです。
インプラントに不具合が生じ、新たに入れ歯を作るには、インプラントを抜かなくてはなりませんが、そのためには骨を割るような大がかりな手術をしなくてはなりません。
しかし、通常インプラントをしている患者さんは高齢で、そのうえ糖尿病や高血圧症などの生活習慣病、全身疾患を抱えていることが少なくありません。そうした患者さんにインプラントを抜く手術を施すことは危険な場合が多いのです。
気軽にインプラントをしたせいで、失わなくてもすんだかもしれない歯を失い、最後には入れ歯を入れることすらできなくなることも多いのです。・・・
・・・もともとインプラントは、大きな怪我や癌などの手術によって目や鼻、耳などを失った場合に、その周囲の骨に金属を打ち込んで、人工の目や鼻をマグネットで取り付けるものです。こうした手術を受ければ、顔面の形態を回復して社会生活への復帰がしやすくなります。インプラントは、言わばリハビリテーション医学のためのもので、このような場合にインプラントを用いるのは、患者さんにとって大きな福音となることでしょう。・・・
・・・ものを噛むたびに繰り返し力のかかる歯に、そのまま転用するには無理があります。天然の歯には歯根膜があり、歯に加わる力をやわらげる作用がありますが、顎の骨に直接打ち込むインプラントにはこうした作用は望めません。ものを噛むたびに、力の衝撃がダイレクトに骨に伝わり、他の歯との噛み合わせバランスが取れません。そもそも、インプラントが打ち込めるほど丈夫な骨があれば、入れ歯が作りやすい状態でもあります。
しかし、インプラントがダメになったあとは骨の状態も悪く、入れ歯を入れるのもむずかしくなり、悲惨な結果を招きます。・・・
「いずれにしても、私自身や家族の口の中に入れる気はしない。自分にしない治療法を患者さんにすることもありえない。」と著者の歯科医林晋哉氏は述べています。
このようなことを知ると、安易にインプラントを普段の治療に取り入れるべきものでないのでしょう。不都合な状態にならないように、セカンドオピニオンを求めるなりして選択して行きたいですね。
(参)いい歯医者悪い歯医者