味覚を壊す黄金トリオというのがあります。「食塩」「うま味調味料」「タンパク加水分解物」の三つです。この黄金トリオに様々な風味をつけることで、私たちの日常にあふれる加工食品が作られています。例えば、各種のだしの素、ラーメンスープ、スナックなどです。これらの濃い味の中毒になり、本物の食材の味が分からなくなり、塩分に鈍感になってしまうのです。
今回は、この味覚破壊の黄金トリオの一つ、「うま味調味料」の主要な成分である“グルタミン酸ナトリウム”についてお伝えします。
このグルタミン酸ナトリウムは、そもそも自然のアミノ酸ではありません。「化学合成物質」の一種です。それらの化学物質を1980年代に、印象を良くする名称の「うま味調味料」に変えてあるのです。
このグルタミン酸ナトリウムは、天然の原料による発酵法を利用して、以下のようにして作られています。
サトウキビから砂糖をとるときに、これ以上砂糖はできない「廃糖密」、いわば、砂糖を搾り取った残りカス(残滓)というものが出来ます。この「廃糖密」をエサにして遺伝子を組み替えたバクテリアによって、大量のグルタミン酸を作り出しているのです。このグルタミン酸は天然成分ですが、これだけでは味がほとんどないため、炭酸ナトリウムや苛性ソーダでグルタミン酸ナトリウムという化合物に合成しているのです。
ここで、昆布などの天然のうま味成分である「グルタミン酸」と化学合成物質である「グルタミン酸ナトリウム」は似て非なるものです。この認識がとても重要です。
アメリカでは、このグルタミン酸ナトリウムを「MSG(Monosodium Glutamate)」と呼び、とても敬遠されています。というのも、1960年代に中華料理を食べた人が頭痛、体のしびれ、疲労感などの症状を訴えたことがきっかけです。これがマスコミにグルタミン酸ナトリウム(MSG)が原因の「中華料理症候群」として大きく取り上げられたのです。それから半世紀経った現在でも、アメリカの健康志向の根強さから「No MSG」が潮流となっています。
食品の安全について、かなり厳しい審査基準を設定している欧州食品安全機関(FFSA)は、2017年に1日における許容摂取量(ADI)を30㎎/㎏と定めています。60キロの大人で1.8グラムとなります。日本人の1日当たりのうま味調味料の摂取量は、1.9グラム(平成12年、厚生省)と既にオーバーしています。
2014年「子どもの味覚に異変が起きている」と報道がありました。東京医科歯科大学の研究グループが、小学1年生から中学3年生までの350人ほどを対象に、基本となる4つの味「甘味、塩味、酸味、苦味」を感じることができるかを調査しました。その結果、いずれかの味を正しく感じることができない子どもが30%あまりもいることがわかったのです。
そして、味覚を感じることができなかった子どもには共通の特徴がありました。加工食品などの味の濃いものや、人工甘味料を使った清涼飲料水を頻繁に口にしていたのです。
「安い」「簡単」「便利」「きれい」「おいしい」という添加物の5つのメリットも含め、食の意味を考えてみましょう。
小さなころから、このような食事をしていると、脳や心もダメになります。そして、大人になったとしても、がん、脳・心臓などの血管疾患、慢性炎症疾患、そして認知症が待っています。ですから、普段の食事をエサにするのではなく、心や体を養う大切なものとして選んでいきましょう。
(参)家族と自分を守る「安心な食品」の選び方