ドーパミンは、私たちの脳内の伝達物質の一つで、脳の働きに必要な物質です。ドーパミンの主な役目は、私たちを元気にすることではなく、何に集中するかを選択させることです。つまり、人間の原動力とも言えます。
また、ドーパミンは脳の報酬系のシステムでも重要な役目を果たし、生き延びて遺伝子を残せるように人間を突き動かして来ました。人と付き合い、群れで暮らすためにドーパミンが増えることは大切なことなのです。
そして、現代においては、知識を渇望し、周囲をより深く知ることは生存の可能性を高めることになります。新しいことを学ぶ脳は、この時ドーパミンを放出するのです。
情報社会と言われる現代では、さらに新しい情報をスマホやパソコンが次から次へと運んで来ます。スマホやパソコンのページをめくるごとに、脳はドーパミンを放出し、その結果、私たちはクリックが大好きになります。しかも実は、今読んでいるページよりも次のページに夢中になっています。インターネット上のページの5分の1に、私たちは時間にして4秒以下しか留まっていないのです。
ドーパミンを放出する報酬システムが作動するのは新しい経験ではなく、それに対する期待です。何かが起こるかもしれないという期待が、よりいっそう報酬中枢を駆り立てるのです。ネズミの実験でも、時々しか餌が出てこないようにしたほうがレバーを押す回数が多かったのです。サルの実験では、2回に1回という頻度のときに、最もドーパミンが放出されました。というのも、ドーパミンの最重要課題は、行動する動機を与えることだからです。
そして、現代では「もしかしたら大事なのかも」という期待にドーパミンが放出され、スマホを手に取りたくなるのです。
実に、現代の大人では1日に4時間以上をスマホに費やし、10代の若者も4~5時間費やす状況です。朝起きてまずやるのは、スマホに手を伸ばすこと。1日の最後にやるのは、スマホをベッド脇に置くこと。私たちは1日に2600回以上スマホを触り、平均して10分に1度スマホを手に取っているのです。スマホがないと、人の世界は崩壊する状況です。
長い人類の歴史の中で、ほんの20年ほどで私たちの生活様式は大きく変わり、この情報社会に身体がついていけずに様々な問題が出て来ているのです。
その中で、このスマホは毎回あなたに「こっちに集中してよ」とドーパミンを小出しにして誘惑しているのです。スマホにより、1日300回も「ドーパミン注射」を与えられているのです。ゆえに、スマホは最新のドラッグであると言われるのです。
この不自然なドーパミン注射により、私たちは仕事や授業の集中力は低下し、記憶力や学習能力も低下し、周囲への無関心につながり、一緒に食べる仲間がつまらなくなっています。
そのためにも、意識してスマホファスティング、情報デトックスをして行きましょう。
(参)スマホ脳