さまざまな不調や病気が牛乳やパンと関係しています。今回は、健康に良いと思われている牛乳のデメリットについてお伝えします。
しかし、給食でよく出される牛乳にはメリットもあります。
それは、タンパク質が豊富で生体に必要な全てのアミノ酸を含んでいること、カルシウムが豊富なこと、皮膚・粘膜を健康に保ち、視力を良くし、抗酸化としても働くビタミンAを含むこと、そして安価で保存性も良いことなどがあります。
それでもさまざまな不調が牛乳と関係しています。
デメリットとしては、豊富なタンパク質がアレルゲンとして働いてしまうこと、カゼインにより炎症を起こすこと、乳糖による消化不良の問題、IGF-1(インスリン様成長因子)やエストロゲン、抗生物質の問題、飼料の問題、超高温殺菌やホモジナイズの問題などがあり、健康に寄与する以上のものになっています。ですから世界の常識では、牛乳はコーラと同じ嗜好品で、決して健康のために飲むものになってはいません。
旧態然とした今の日本の栄養学やあまりにも畜産業界を向いているマスコミの影響で、日本の乳製品への常識が世界とは正反対を向いてしまっています。
乳製品が健康を害さないのであればどうでも良いのでしょうが、人々の健康に貢献していく立場としてはとても無視できない問題なのです。そして、事実さまざまな不調や病気が牛乳と関係しています。
「パンと牛乳は今すぐやめなさい!」の内山葉子医師は、著書の中で、パンと牛乳が深くかかわって発症、あるいは悪化する症状・病気を紹介しています。
それは、日常的な症状では、便秘、下痢、おなかの張り、肩こり、頭痛、日中の眠気、なかなかやせない、疲れやすい、鼻水・鼻詰まり、節々の痛み、生理痛、排尿トラブル、尿もれ、乾燥肌、原因不明の湿疹やかゆみ、じんましん、イライラ、落ち込みなど。
病気では、花粉症、アレルギー性鼻炎、ぜんそく、慢性関節リウマチ、慢性疲労症候群、繊維筋痛症、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、甲状腺疾患、子宮筋腫、卵巣嚢腫、不妊症、うつ、乳がん、前立腺ガンなどのほか、自閉症、多動症、アトピー性皮膚炎など多岐にわたって関係しています。
牛乳の最大の問題は「体にいい」という思い込みです。
高齢者ほど、骨を強くするために牛乳やヨーグルトをとっています。しかし、逆にこれら乳製品をとればとるほど、骨をもろくする事実があるのです。
・ハーバード大学では、ナースヘルススタディーにおいて、7万8千人の女性を12年間調査し、骨折は乳製品を摂取するほど多く、大腿骨頸部骨折の増加リスクは乳製品由来のカルシウムに関係していると結論づけた。
・米国国立乳牛議会では、1日1杯の牛乳を2年間摂取した女性は、全く摂取しなかった女性に比べて、骨量が2倍の速さで減少し、牛乳によるタンパク質のとり過ぎが原因と結論づけた。
・世界的な子育てバイブルとして知られる「スポック博士の育児書」の改訂版では、「アメリカは社会全体で食生活を変えなければならない。最悪の食品は牛乳・乳製品である」「自然界には離乳期を過ぎてミルクを飲む動物はいない。人間も同じで、離乳期を過ぎたらミルクを飲まないことが正常である。必要なタンパク質を植物からとったほうが、子供のカルシウムバランスはよくなる」と修正した。
・杏林予防医学研究所所長の山田豊文先生は、牛乳をよく飲む(1日2杯以上)人は、飲まない人に比べて骨折リスクが2倍以上、ヨーグルト(1日1杯以上)では約3.5倍、そしてチーズにいたっては、一切れでも約4倍と報告している。
そして、骨だけではなく、さまざまな不調・病気との関係が明らかになっているわけですが、どういう理由かをまとめてみました。
① 牛乳を飲むほど、カルシウムが体内から失われて骨折しやすくなります。
牛乳を飲むと、消化されにくいタンパク質を多くとることになり、腸の中に窒素残留物が増える。その窒素残留物が吸収されて血液中に増えると、血液が酸性に傾くので、それを中和する為に骨からカルシウムを溶かしてしまうことになります。
それが、カルシウムパラドックスといわれるように、牛乳や乳製品をとればとるほど骨粗しょう症を引き起こし、骨折しやすい体にしてしまうわけです。
② 牛乳はあくまで牛のミルクであり、人の母乳とは組成比率が違います。
牛乳は誕生後すでに成熟している仔牛にはさらなる成長のため、IGF-1を誘導するカゼインが主体となり、未成熟のヒトの赤ちゃんは、免疫や感染防御、腸の修復、便の排出などが優先されるためにホエイ主体になっています。
③ 今の牛乳は以前と製法が変わり、今の牛乳は危険な飲み物になっています。
これは、牛乳そのものの問題はありませんが、製法や加工による問題になります。
超高温殺菌とは、本来は常温で長期間の船舶向けのために開発された方法で、手間もかからず大量生産に向いていて、今の日本の主流になっています。
牛乳を120~135℃で1~3秒殺菌する方法です。
ちなみに、海外では62~65℃で30分間殺菌の低温殺菌が主流で、大量生産はできませんが、ホエイ・カゼインの熱変性を起こさない方法です。(パスチャライズ、パス乳)
さて、超高温殺菌(UHT乳)により、今の牛乳は酵素活性が失われ、タンパク質も変性し、消化・吸収されにくくなり、さらに栄養素も壊れてしまいます。
生の牛乳であれば酵素が生きているので、分解しにくいカゼインも分解する酵素や乳酸菌などの善玉菌も含まれていました。
そして、ホモジナイズですが、これは乳脂肪を砕くことで成分を均一にし、クリームが浮かばないようにするものです。しかし、このことで砕かれた脂肪球がカゼインやホエイを引き込み巨大なタンパク質へ変化することで、アレルギーを起こしやすくしてしまいます。
④ 牛乳のタンパク質の約80%を占める「カゼイン」を人は分解・消化できません。
母乳のカゼインはβ型カゼインですが、牛乳は主にα型カゼイン(αs1)で分解・消化できず、それが腸の中に未消化物としてたまると腸に炎症が起こりやすくなります。(αs1-カゼインはホエイの6倍のIL-8という炎症性サイトカインの分泌を誘導)
ちなみに、カゼインと乳清タンパク質の含有量の比率は、母乳が4対6なのに対して、牛乳が8対2で、牛乳の方が圧倒的にカゼインを多く含みます。
さらに、人間が消化できないα型カゼインはアレルゲンとなりやすいため、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症、さらに遅延型アレルギー(IgG型)の原因にもなります。
⑤ 牛乳のカゼインから不完全に分解されてできるカソモルフィンはモルヒネ様物質です。
カソモルフィンというモルヒネ様物質“エキソルフィン”もパン同様に中毒症状を起こし、精神不安や神経障害を起こします。
脳神経に影響を及ぼして、ふらついたりめまいがしたり、物が二重に見える方もいます。さらに気づきにくいですが、便秘や排尿トラブル、呼吸器異常もあります。
⑥ 牛乳が胃酸と反応すると乳餅(カード)ができ、栄養素の吸収を阻害します。
もともと、カゼインタンパク質は「にかわ」状の物質で、木工用ボンドに使われる粘着性の極めて強いものです。それから出来るカードは、さらに粘着力が強く、ビタミンやミネラルの吸収を妨げます。最近ではチーズがもてはやされているので、さらにカードによるビタミン、ミネラル不足による肥満や疲労感、無気力感が増加し、さらに女性では特に、「鉄」の吸収阻害による鉄欠乏性貧血が問題となっていくでしょう。
⑦ 日本人の約8割は乳糖を分解する酵素がありません。
牛乳には5%前後の糖質が含まれますが、ほとんどが乳糖です。生乳であれば、乳糖を分解するラクターゼという酵素が含まれていますが、加熱している現在の牛乳には含まれないので自前の酵素で分解するしかありません。
ところが、体内でラクターゼを作れない「乳糖不耐症」の人が日本人に多くみられます。乳糖不耐症の人が牛乳を飲むと、下痢をしたり、おなかにガスがたまったりします。
基本的に赤ちゃんは乳類によって成長するので、日本人でも2歳くらいまでは乳糖を分解する酵素と作ることができます。しかし、2歳を過ぎて、それほど急激に成長しなくなると、乳糖を分解する力も不要になるため、徐々にその酵素はなくなっていくのです。
ところで、乳糖は砂糖のように甘くはないのですが、体内で分解されるとブドウ糖ができます。乳糖にはα型とβ型があり、牛乳に含まれるのは、血糖値を上げやすいβ型です。乳糖不耐症でない人にとっては、乳糖が消化できることによる血糖値上昇の害も考える必要があります。
⑧ 牛乳に含まれる女性ホルモン(エストロゲン)、抗生物質や有害物と乳がんとの関連が疑われています。
牛乳は、本来、牛の赤ちゃんが体重を1日に1kg増やすために必要な成長ホルモンが含まれています。この成長ホルモンは「IGF-1(インスリン様成長因子)」と呼ばれるものです。
また、多くの乳牛は、エサに遺伝子組み換え穀物が使われ、乳腺炎などの病気も多いので抗生物質も多く与えられています。「母乳は白い血液」といわれるほど、母牛の血液の状態を反映した成分になります。
不健康な牛からは、不健康な成分の牛乳しかとれません。
その結果、牛乳に含まれる多くの化学物質やホルモンにより、生殖器の病気やホルモンに関する甲状腺や膵臓、副腎などの病気のリスクが高まってしまいます。
さらに、効率を求める畜産により常に乳牛が妊娠状態のままなので、どうしても牛乳中のエストロゲン濃度は高くなっています。
そのことが、ヒトの血中のエストロゲンレベルを過剰にしてしまっています。
その結果、特に女性において月経開始年齢を早め、月経前症候群や生理痛をひどくし、次にはエストロゲンに敏感に反応する生殖器官(子宮・卵巣)や乳房の細胞に異常な成長を促し、やがて腫瘍やガンを形成させてしまうことになるのです。
特に、乳ガンについては、すでに牛乳・乳製品との関連がいわれていて研究もされています。
ガンだけでなく、牛乳は動脈硬化や腎障害のリスクを高める食品でもあります。牛乳は動脈硬化を進める脂肪酸を多く含むうえ、ほかの肉や魚に比べて、タンパク質の中に腎臓への負担となるリンも多く含むからです。
つまり、牛乳を摂取すると、太い血管から毛細血管まで障害を受けてしまうのです。
以上の多くの理由から、サロンにおいて栄養指導や食事指導の中で牛乳や乳製品がもはや健康飲料・健康食品でないと言い続ける理由です。
(参)パンと牛乳は今すぐやめなさい、食物養生大全、分子栄養学実践講座、医学常識はウソだらけ実践対策編、老けない体を作る生活習慣