清水泰行医師は、根本的な原因が「糖質過剰摂取」につながる様々な病気をまとめて「糖質過剰症候群」と呼んでいます。
糖質は、体を構築するものでもなければ、生き延びるために必須のものではありません。
しかし、栄養素の中で、直接血糖になるのは糖質のみです。
糖質過剰摂取を続けると、インスリンがたくさん分泌され、脂肪が増加し肥満になってしまいます。
高血糖がなぜ悪いのかは、糖質過剰摂取では血糖値が急上昇する「グルコーススパイク(血糖値スパイク)」が、酸化ストレスを増大させたり、炎症反応を増加させ、血管を傷つけたりするからです。
さらに、高血糖が起きると、ブトウ糖の一部はポリオール経路という反応を起こします。これはブドウ糖がソルビトールになり、その後、果糖に変換される反応です。このポリオール経路が亢進すると、反応に必要な補酵素(NADPH)がどんどん消費されます。この補酵素(NADPH)は、酸化型グルタチオンを還元型に戻すのに必要です。グルタチオンは体内の重要な抗酸化物質であり、還元型が減少すれば、抗酸化力が低下してしまいます。
つまり、グルコーススパイクにより、活性酸素を除去する力も弱まってしまうのです。
糖は非常に反応性が高く、体内ではタンパク質とくっついて、糖化反応(メイラード反応)を起こしてしまいます。その反応の最終的な状態である終末糖化物質(AGEs)というものができることにより、機能障害などの有害作用を引き起こしたり、酸化ストレスを増加させたり、炎症反応を起こしたりします。
ちなみに、血液検査で測るHba1cというものがありますが、これはヘモグロビンタンパクと糖がくっついて糖化したものです。
体のほとんど全ての細胞、組織、酵素などは、タンパク質と脂質でできています。つまり、体の中で糖化しないものはないと言っても良いわけです。ですから、高血糖はどのような機能障害をも引き起こす可能性を持っているのです。
さて、血糖値が高くなると、すい臓からインスリンが分泌されます。
ところが、現在の食生活においては、大量のインスリンを分泌しないと血糖値を下げられないほどの糖質量を摂取していて、高インスリン血症になっています。
この高インスリン血症もまた、活性酸素を生み出し、酸化ストレスを増大させます。さらに、インスリンは、弱いながらも細胞増殖や成長作用を持ち、また、インスリン様成長因子(IGF)という、インスリンに似た強い細胞増殖や成長作用を示す物質を増加させるので、大量にあると、必要以上に細胞が増殖したりします。
その一つが、「ガン」になるのです。
また、加齢と言われている根本の多くは、AGEs(終末糖化物質)の蓄積、それに伴う酸化ストレスの増加やミトコンドリアの機能障害であり、ある程度は抗えないものですが、糖質制限によりかなり軽減できるものです。
現在では様々な病気が存在しています。糖尿病、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳卒中、ガン、脂質異常症、認知症、うつ病、骨粗しょう症、片頭痛など様々です。
今の医療では、その多くの病気の原因は、それぞれにあると考えられています。しかし、それぞれの病気の間には関連が認められていて、原因の原因をずっと追っていくと、それらの原因が大本の原因である「糖質過剰摂取」一つにつながっていきます。そこから考えていくと、多くの病気はつながりがあり、どうして様々な病気が併発することが多いのかが簡単に理解できます。
では、ここで最も分かりやすい糖質過剰症候群として、肥満と糖尿病、メタボについてご説明します。
糖質を過剰に摂取すると、体内ではインスリンが過剰に分泌されます。インスリンは、血液の中のブドウ糖を筋肉や脂肪細胞に取り込ませる役割があります。その結果、筋肉や脂肪細胞に取り込まれたブドウ糖は、エネルギーとしてすぐに使われないと、グリコーゲンや脂肪に変換されて蓄えられてしまいます。それが蓄積されて、肥満となるわけです。
また、糖質により血糖値が上がるが、糖質の摂取過剰はこの血糖値を持続的に高値にする。血中のタンパク質の一つ、ヘモグロビンタンパクの糖化も増加し、糖尿病の診断が下されることになります。
最後のメタボリックシンドロームについて、この診断基準は以下にまとめます。
1. 腹部肥満:ウエストサイズが男性は85cm以上、女性は90cm以上
2. 中性脂肪値150mg/dl以上 HDLコレステロール値40mg/dl未満
(いずれか、または両方)
3. 血圧:収縮期血圧(最高血圧)130mmHg以上 拡張期血圧(最低血圧)85mmHg以上 (いずれか、または両方)
4. 空腹時血糖値110mg/dl以上
1の腹部肥満を必須項目として、2~4のうち2項目以上当てはまるとメタボリックシンドロームとなります。
腹部肥満は内臓脂肪の蓄積であり、糖質の過剰摂取で起こります。中性脂肪も糖質過剰で上昇し、HDLコレステロールは糖質過剰摂取で低下します。
血圧に関しても、糖質過剰摂取でインスリン分泌が多くなるほど、交感神経系は活性化され、インスリンとインスリン様成長因子(IGF-1)はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系というメカニズムを活性化することにより、血圧を上昇させます。
また、糖質過剰摂取では血管の拡張性が低下し、高血糖は動脈硬化を促進することでも血圧は上昇します。
以上のように、肥満と糖尿病、メタボが糖質過剰症候群の一つと理解されましたが、ガン、認知症、心血管疾患等についても今後ご説明させて頂きます。
必須でない糖質になるご飯、麺、パン等の過剰摂取は、特に意識して行きましょう。
(参)「糖質過剰」症候群