ガンの死亡率は、医療の進歩により減少傾向にありますが、罹患率はどんどん増えています。
ガンのエサは通常は主に糖質です。
全てのガンを最終的に完全に殲滅することは難しいかもしれませんが、糖質をできる限り減らせば、ガン細胞はかなり弱ると考えられ、かなりの長期間ガンと共存できる可能性があります。場合によっては他の治療との併用で、ガン細胞が消えることも期待できます。
ですから、糖質制限をしたならば、プラズマ療法やCEAT(ガン活性消滅療法)によって、より短期間にガンが消えることでしょう。
しかし、何よりもガンを発症しないことが最も大切です。
ガン細胞は、ブドウ糖を使って、「嫌気的解糖」という非常に効率の悪いエネルギー生産を行っています。それでいて、ガン細胞はどんどん増殖するので、通常の細胞の何倍ものブドウ糖を必要とします。ですから、糖質過剰摂取はガン細胞から見ると大歓迎なのです。
ちなみに、ガンを検査するPET検査は、ガン細胞がブドウ糖を好んで大量に取り込むことを利用した検査になります。
前回お伝えした、高血糖や高インスリン血症、HDLコレステロール値の低下は、発ガンリスクを増加させます。これらは、全て糖質過剰摂取で起きています。
2018年、ノーベル医学・生理学賞を本庶佑、京都大学特別教授が受賞しました。それは、免疫を担うT細胞の表面にある「PD-1」というタンパク質と、ガン細胞の表面にある「PD-L1」が結合すると免疫にブレーキがかかり、免疫機能が抑制されることを発見し、この結合を阻害する物質、ニボルマブ(商品名:オプシーボ)によりガン細胞に免疫細胞が攻撃できるようになるというものでした。
実際は、この結合を阻害する部分が他にも存在しますし、賢いガン細胞はすぐに別のルートで免疫を逃れるようになるので、結局は、オプシーボなどの免疫チェックポイント阻害薬は高価なだけで、今までの抗ガン剤と同様に副作用も多く、効き目も5%程度なので、若手の医師はあまり使わなくなっています。
とにかく、糖質の過剰摂取は、高血糖により(PKM2活性の低下が起こり、それによりマクロファージのPD-L1の発現量が増加し、そのPD-L1とT細胞のPD-1がくっついてしまい)、免疫が妨げられるのです。
今までをまとめると、糖質過剰摂取は、高血糖、糖化、酸化(活性酸素増大)、インスリン様成長因子増大、免疫低下によりガン細胞が増殖するのです。
さて、ここでいくつかの疾患とガンとの関係をご紹介します。
まず、帯状疱疹ですが、これは子どものころに感染した水痘(水ぼうそう)のウイルスがそのまま体の中に潜んでいて、大人になってから、体調や免疫力の低下により、皮膚に痛みを伴う皮疹を起こす病気です。
この背景となる免疫の低下も、このPD-1の過剰な発現がT細胞の免疫機能を低下させることに関連していると考えられます。T細胞の力でウイルスは休眠状態になっていましたが、PD-1の発現増加に伴い、T細胞の力が低下してしまい、解き放たれてしまうのです。
このPD-1の過剰な発現は、糖質過剰摂取による高血糖でしたね。
台湾のエビデンスでは、帯状疱疹にと診断された後、1年以内にガンに罹患するリスクは、58%増加しました。
また、アメリカのエビデンスでは、糖尿病患者の帯状疱疹のリスクは3倍以上でした。
結局、糖質過剰摂取が免疫機能を低下させているのです。
食事が西欧化すると、ガンの発症が急激に増加しています。
このとき、食事の変化で起きたことは、3大栄養素の中の糖質の増加だけです。もちろん、脂質の質が悪くなったり、その他ビタミンなどの摂取量が低下した可能性も否定はできません。
ここで、糖尿病とガンの関係ですが、糖尿病でインスリン注射をしている人にガン発症が多くなっています。インスリン使用でのガン関連の死亡率は約2倍になります。
肥満もガンと強く結びついています。
過体重や肥満は、少なくとも13種類のガンのリスク増加と関連しています。13種とは、髄膜腫、多発性骨髄腫、食道腺ガン、甲状腺ガン、閉経後乳ガン、胆のうガン、胃ガン、肝臓ガン、すい臓ガン、腎臓ガン、卵巣、子宮および大腸直腸ガンです。
ガンによる死亡リスクは、男性の肝臓ガンは、高度の肥満があると4.52倍にもなり、女性でも腎臓ガン4.75倍、子宮ガン6.25倍です。
アメリカでの全てのガンの40%は、過体重および肥満関連のガンであり、男性で24%、女性で55%です。
ガンを全て糖質過剰症候群と言うことはできず、胃ガンや肝臓ガンではウイルスがガンの原因であるとされています。しかし、胃ガンや肝臓ガンの糖尿病や肥満と関連を見ると、やはりここでもそれらの原因と同時に糖質過剰摂取が起きてはじめて、ガン化する可能性があることがわかります。
アメリカ人の糖尿病のない人では、単純ヘルペスウイルス1型、水痘ウイルス、サイトメガロウイルス感染とは関連がなかったが、ピロリ菌に感染すると糖尿病の発症は2.7倍になっています。ピロリ菌が起こす炎症により、インスリン抵抗性が増加し、そこに糖質過剰摂取が相まって、糖尿病、胃ガンを引き起こすと考えられます。
九州久山町の研究において、胃ガンの人の分析で、空腹時高血糖に加え、ピロリ菌の感染のある人の場合は、どちらもない人と比較すると、胃ガンの発症リスクが、中等度の空腹時高血糖(95~104)で3.5倍、高度の空腹時高血糖(105以上)で4.2倍にもなりました。
このことは、Hba1c(ヘモグロビンエイワンシー)による分析でも同じであり、ピロリ菌に感染していてもHba1cが6未満の人では、Hba1cが6未満かつピロリ菌に感染していない人と比較しても有意差はなかったが、Hba1cが6以上でピロリ菌感染のある人では、胃ガンの発症が4倍にもなりました。
つまり、胃ガンや肝臓ガンなどの感染が関わるガンは、糖質過剰摂取がなければ、ガンにならない可能性が高いわけです。そして、他のガンだけでなく、感染が関わるガンも、糖質過剰症候群と考えられるのです。
繰り返しますが、ピロリ菌に感染していても、糖質の過剰摂取をやめ、抗酸化の野菜などを中心にとる食生活なら胃ガンを恐れることも無いですし、副作用の強いピロリ菌の除菌等をする必要も無いわけです。
本来、ピロリ菌も我々の周りにいる常在菌ですから、居るから殺すというような単純な発想ではなく、地球上の生命同士、仲良くしていきたいものですね。
(参)「糖質過剰」症候群