私たちは、日常生活において、それを意識しようがしまいが、常に頭の中に何かをイメージしながら生きています。
よりよいイメージは気分を高揚させるだけでなく、身体レベルで私たちに好ましい状態を作り出します。イメージするときに大切なことは、いきいきと健康的な活動を行っていることに意識を持っていくことです。
イメージ法を行う際には、次の3つの大切な姿勢があります。
① 望む結果をイメージする
がんの治療であれば、「治療ががんだけにきちんと作用し、正常細胞は傷つけない」というようなイメージを思い描くことが効果的です。実際に、化学療法に取り組む患者さんではこのやり方で、副作用をコントロールできるようになったと報告しています。
② 自分のやり方でイメージする
まず、私たちはみんなイメージの達人だということを知り、それぞれのイメージの仕方や個性を尊重して自由に行うということです。
③ 取り組みに意味や価値を与えて行う
漫然と行うのではなく、「今、自分がとても大切なことに取り組んでいるのだ」ということを意識し、その作業に価値を与えて行うということです。
さて、イメージ法に取り組むにはそれなりのエネルギーを必要とします。簡単に行える日もありますが、雑念が出てきたり、エネルギーが低下していてなかなか取り組めない時もあるでしょう。そのときには、いったんそこでイメージするのを止め、意識的に呼吸をして見ましょう。
気分が落ち込んでいる状態から気分を安定させるには、意識的な呼吸法が有効です。意識的呼吸を行うことで、今、この瞬間に意識を向けることが可能になります。マインド・フルネスの基本にもなりますが、息を吸うときに頭の中で「吸ってー」と唱え、吐くときに「吐いてー」と唱えるだけです。
意識的なイメージはエネルギーを必要とするのに対して、意識的呼吸はエネルギーを与えてくれます。意識的呼吸をしながら、今、自分の身の回りですでに起こっていることで、あなたが感謝できることや好ましいことに意識を向けてみます。例えば、今、座っている椅子や、横たわっているベッドの心地よさ、そこから見える風景の輝きなどを意識しながら、ゆったりと呼吸して見ましょう。
そして、エネルギーが高まり、気分が安定してきたら、もう一度、自分が望む結果をイメージして見ましょう。但し、どうしても出来ないときには、イメージすることをやめて、気分が良いときに行いましょう。
もう一つのエクササイズをご紹介します。それは、絵を描くことで、それによって、自分自身が病気、自己治癒力、治療、そして病気(がん)に対してどのようなイメージを持っているかを確認するのに有効です。
古代ギリシアの医師ガレノイスも、がんの治療にイメージ法が有効であると記しています。そして、イメージする際、次の3点が大切だと述べています。
1. 病気を治癒し得るものとイメージする
2. 自己治癒力がきちんと備わっていて働いていることをイメージする
3. 治療が効果的に働きかけていることをイメージする
前述のイメージの3つの大切な姿勢に共通しますが、さらに絵を描くことで、具体的にイメージを抱くのに役立つのです。
絵を描くときは、うまい、下手にこだわらないでください。他人に評価されるものではなく、自分が自分自身をどうとらえているかを知るためのツールなのです。
また、このエクササイズは、「より良いイメージを強化する」意図で行います。患者さんだけでなく、サポーターの方にも行ってもらいます。サポーターの方には、自分がサポートしている患者さんのイメージを描いてもらいます。それによって、自分がどのような思いで患者さんをサポートしていて、どの部分を改善し、強化したいかを観察してもらいます。
また、サポーターと患者さんとの間に病気や健康に対する認識の差があれば、絵を通して確認し、お互いの認識を健全なものに調整することが必要でしょう。
治癒への道を歩む過程で時折、このエクササイズに取り組み、自分自身を振り返ってみることをお勧めします。
(参)サイモントン療法