曹洞宗開祖、道元(1200~1253年)の教えである「五観の偈(ごかんのげ)」は、主に禅宗で、食事の前に唱える教えです。中国唐代の教えを道元が著書で引用し、日本でも知られるようになりました。
ちなみに、道元は鎌倉時代初期の禅僧で、曹洞宗の開祖、只管打坐の禅(出家在家に拘わらず、求道者各自が専ら座禅に徹することで悟りを開くことを標榜したもの)を伝えました。正法眼蔵という仏教思想書を著し、和辻哲郎など西洋哲学の研究家からも注目を集めていました。
以下に、「五観の偈(ごかんのげ)」の内容をご紹介します。
- 功の多少を計り、彼(か)の来処を量る
私たちがいただく食事は、多くの人々の労力と天地の恵みによってもたらされるものであることを考えなさい。
- 己が徳行の全欠を忖(はか)って供に応ず
食事をいただくに相応しい働きや生活をしているか反省し、欠けているところがないかを考えなさい。
- 心を防ぎ過(とが)を離るることは貪等を宗とす
食事をいただくのは、迷いの心をなくし、過ちを犯さないよう修行するためである。むさぼりの心、怒り憎む心、愚痴の心を起こさないよう注意しよう。
- 正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為なり
食事をいただくのは、良薬を飲むのと同じで、心や体を養い育てるためである。
- 成道の為の故に今この食を受く
食事をいただくのは、人間としての道、人格を完成させるためである。
以前2019.11.17のブログでご紹介した江戸時代の水野南北の「開運の極意」に通じるものがありますね。
食事を“エサ”にせず、食の意味をよく考え食を節して、生かされる生き方にシフトして行きたいですね。