糖尿病は現代医学では「インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気」としていて、血糖を下げてコントロールすることが主な治療法になります。
そして、糖尿病の食事指導は血糖値を上げない糖質・炭水化物の摂り過ぎをコントロールすることが中心になっています。
ところが、熱心に行う特定保健指導によって、糖尿病の指標の一つであるHba1c(1~2カ月の平均血糖値の目安とされている)の値が指導を受けていない人よりも2.49倍も悪化(上昇)があったのです。
それどころか、積極的に進められる生活習慣指導の結果においても、有名な福岡県久山町のみならず、かえって糖尿病が増えてしまったのです。
では、その原因は糖質過多にあったのでしょうか。同時に、コントロールを下げるために動物性脂質を減らして、植物性脂質を摂るよう指導した内容にあったのでしょうか。
先の久山町で糖尿病患者が全国平均よりも多くなった原因は、植物性脂質が多かったことが関連づけられたのでした。久山町のみならず全国での糖尿病の増加と植物油脂の摂取増との関係が明らかになりました。
海外に目を転じると、カナダではキャノーラ油を代表とする植物脂質に多い不飽和脂肪酸の著しい増加が糖尿病の増加に関与していたのです。
さて、私たち人間のシステムでは、余った糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素はどれもインスリン抵抗性を起こしうるのです。余った栄養素からは貯蔵するために脂肪に変換され、皮下や腸間膜、筋肉細胞間の脂肪細胞に詰め込まれるのです。ブドウ糖を細胞に取り込み脂肪の合成をするのはインスリンですが、脂肪細胞が満杯でアディポネクチン(脂肪を合成し貯蔵を促すホルモン)が出せない状態では、インスリンといえども本来の役割を果たすことができずにインスリン抵抗性が生じるのです。
そして、国、糖尿病学会の食事療法では糖尿病が治るどころか急増しているのです。
日本糖尿病学会の指導内容は「飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控える」というものですが、飽和脂肪酸(動物性脂肪に多い)もコレステロールも、冠動脈心疾患など、動脈硬化が招く疾患の原因にはならないのです。飽和脂肪酸やコレステロールの摂取が少ないほど、動脈硬化による心臓・脳の疾患リスクが減るというエビデンスはどこを探しても見当たらないのです。それどころか、これらコレステロールや動物性脂肪は脳卒中を防ぐ防御因子なのです。
野菜は体に良いイメージがあり、実際そうですが、油に関しては当てはまりません。
実は、キャノーラ油をネズミに与えると、糖尿病を発症させるだけでなく、寿命を縮める作用があります。同様に、マーガリンやホイップクリームで問題のトランス脂肪酸もインスリン抵抗性を増し、さらに寿命を縮めてしまいます。
また、健康に良いイメージのあるオリーブ油もインスリン抵抗性を増すどころか脳卒中を促進し、寿命を縮めます。それどころか、発がんも促進します。但し、主成分のオレイン酸ではなく、まだ解明されていない微量成分が働いているとされています。
安価だということでバターやラードに取って代わったパーム油もインスリン抵抗性を増し、糖尿病を悪化させるどころか、がんを増やします。
ちなみに、人気の高いココナッツ油に多く含まれている中鎖脂肪酸、私も以前は良いと思ってコーヒーに乗せて飲んでいた時期がありました。このココナッツ油は、キャノーラ油と同様に環境ホルモンのように働いて、前立腺がんを増やしてしまいます。
以上のように、植物性油脂は健康に良いどころか、糖尿病や合併症予防のためには摂ってはいけないのです。
では、どのような脂質を摂ったら良いのでしょうか。以下にまとめます。
・飽和脂肪酸に富む動物性脂肪であるバター、ラード等を肥満にならない範囲で調理に取り入れる。
・オメガ3系のα-リノレン酸が多いしそ油・えごま油・亜麻仁油、そしてEPA・DHAが多い魚油などを、できるだけ多く食生活に取り入れる。
「たかが油、されど油」、糖質よりも油の質が糖尿病のカギを握っていたのです。安易にとらずに選択して使って行きたいですね。
(参)糖尿病は、体にいいはずの油が原因だった